「オランダ人は自転車に乗って生まれてくる」。そんな言葉があるほど、オランダでは約4人に1人※1が通勤・通学に自転車を利用しているそうです 日本でも、ママチャリの保有率は高いものの通勤・通学の利用率は11.2%(他の交通機関との組み合わせも加えると15%)(出典:2010年総務省統計局)と大きな差があります。 この違いは、どこから生まれているのか?ヨーロッパの自転車先進国の自転車事情をご紹介しながら、日本が学べることは何かについて考えていきます。
オランダ人と自転車の出会いは、3歳の誕生日。両親からプレゼントされる風習があり、その時に乗り方も教えてもらいます。
10歳になると、ほとんどの子どもたちが「国民交通試験※」を受けて実技と交通ルールを学び、どこへ出かけるのにも自転車が相棒に。通学はもちろん、買い物や家族旅行にも出かけていき、大人になってからも自転車はいつも手放せない存在です。だから、自転車への愛着も人並み以上。古い自転車を大切に乗ることがステータスでもあるのです。
コペンハーゲンの街は、世界中の自転車乗りにとってパラダイスのようでしょう。市内の主要道路には自転車専用レーンが設置されており、自転車専用の高速道路まであります。将来的にはその高速道路を総延長300kmにも拡大する計画もあるとか。
デンマークでも自転車保有率は、1人約1台。老若男女を問わず、自転車とともに生活するスタイルが定着しているようです。
しかし、そんな彼らもずっと自転車一辺倒だった訳ではありません。ヨーロッパの各国と同様、1960~1970年代には車社会となり、オランダ国内の道路にも自動車があふれかえっていた時期がありました。
けれども、国土の約1/4が海面下であることから地球温暖化による影響をうけやすい土地柄、環境への意識が高いこと。また、地形が平坦であること、一年をとおして温暖で降水量が少ないことなどから、もともと主要な交通手段であった自転車が脚光を浴びることになったのです。
デンマークやドイツなどでも、住環境の改善や、環境負荷を減らすことに意識が高くなると同時に、同じような動きがおこりました。
日本と比べて何より大きな違いは、国・自治体が自転車利用の環境にさまざまな政策を行ってきたことです。自転車に乗りたくても、道路事情や駐輪場などインフラが整っていなければ、ここまで利用者が増えることはなかったでしょう。自転車専用レーンの設置はもちろんのこと、駅前には駐輪場だけでなくレンタル自転車を整備することで自家用車なしでも移動が可能になるようになど、自転車利用が交通システム全体の中にしっかりと組み込まれているのです。
また、ヨーロッパは言わずと知れた自転車レースの聖地。世界的に有名なツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなど、数多くの自転車レースが各地で行われていて、多くの子どもたちが「大きくなったら自転車選手になりたい」と答えるほど自転車文化が根付いていることも大きいでしょう。自転車自体も、いわゆる日本のママチャリのようなタイプではなく、乗りこなす姿も颯爽としているのです。
では、どうすれば日本も自転車先進国に近づくことができるのでしょう。もちろん、国や自治体が主体となってインフラを整えることが重要ですが、民間レベルでもさまざまな工夫ができるはず。日本人の生活スタイルと照らし合わせながら考えていく必要がありそうです。
特に都心では通勤ラッシュは深刻な問題。自転車通勤できればと考える方も少なくないはずです。しかし、実際に行動に移せないのは、駐輪場のことや、四季の変化や天候不順、着替えの問題などいくつものハードルがあるからでしょう。
そういった課題を企業としていかに解決していくかも大切です。たとえば、更衣室やシャワールームの設置、渋滞を避けるためのフレックス制導入、自転車ラックの提供など。自転車通勤による健康増進は企業にとってもメリットは大きいもの。社員が進んで自転車通勤できる会社をめざすというのも悪くないはずです。
自治体が動かないからと諦めていては何も始まりません。自宅や地域の空き地があれば、小規模な駐輪スペースとして活用・提供するというアイデアもあります。たとえ3~4台ほどのスペースだったとしても、近くにお勤めの誰かを助けてあげることができるかもしれません。月極駐車場より月極駐輪場のほうが地域からは喜ばれる可能性もあります。
ヨーロッパの街角では、3~4台ほどの駐輪スペースに小さな広告スペースを設けているケースもあります。工夫次第では、少しずつでも自転車利用を後押しすることができるのです。
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