何をやっても中途半端に終わってしまったり、いまいち自分に自信が持てなかったり。日々の生活に何の不自由もないけれど、何かが足りない…。同じことを繰り返す毎日のなか、ふとそんなことを考えたことはありませんか?
そんな「人生の充足感不足」によく効く特効薬がスポーツ、なかでも持久系スポーツなのだそう。スポーツナビゲーターとして持久系スポーツの普及に尽力しながら、自らも現役プロ選手として活躍中の白戸太朗さんに、「なぜスポーツをすると人生がもっと楽しくなるのか」について語っていただきました。
まず始めに、なぜサッカーや野球ではなく、マラソンなどの持久系スポーツが良いのでしょうか?
「例えば球技などの空間認知能力が必要なスポーツというのは、その人の持つ運動センスが占める割合が大きい。これってセンスの割合が高く鍛えることができないので、センスのない人がどれだけ努力してもなかなか結果に反映されない。ましてや団体スポーツとなれば、ひとりだけが頑張っても全体の成績にはダイレクトに結びつかない。残酷なように思えますが、これが現実なんです。
その点持久系スポーツは、やればできるようになるし、やらなかったらできない。そのひと個人がどれだけ頑張ったかが、非常に分かりやすいんです。
もちろん、そのなかでもトップに立とうと思えば、当然努力だけではなく才能も必要になります。しかしある程度まで、たとえばフルマラソン完走くらいであれば、運動能力が低い人でも必ず完走できるようになる。そういう意味で努力の度合いが分かりやすいのは持久系スポーツなんです。
さらに持久系スポーツの良い点は、自分の努力の度合いが数字ではっきりと分かることです。
たとえば最初は50mしか泳げなかった人が、努力して1,000m泳げるようになった。10kmも走れなかった人が、努力してハーフマラソン走れるようになった…。こんなふうに、努力の度合いがハッキリと数字で分かる。だから持久系のスポーツは自信をつけやすい。コーチとして指導していても、教育効果を得やすいんです」
「できなかったことが努力をすることでできるようになる。そうすると、人は頑張った自分に自信をもつことができます。努力に裏付けられた自信は、その人の生きざまを変えるほどの力がある。
たとえば、困難に直面したときに何が問題なのかを見極める分析力を養ったり、課題をクリアしようとする行動力を育てたり…。持久系のスポーツは体だけでなく心も鍛えることができるので、スポーツシーンだけでなく人生においても挫けにくくなってきます」
人生の逆風に立ち向かう力を育てられるのは大きな魅力ですね。では子供のころからトライアスロンをさせるのはどうでしょう?
「特に小学生くらいの頃というのは『ゴールデンエイジ』と呼ばれていて、一番運動能力や神経が発達する時期なので、いろいろな刺激を与えてあげたい。だから小さいうちはひとつのスポーツに絞りこまずにいろいろなスポーツを経験させ、高校生くらいでスポーツを絞り込むほうが良いと思います。それまでは持久的競技はほどほどでいい。
もちろん、いろいろなスポーツを体験させるという意味では、最低でも3種類の競技が含まれているトライアスロンはいいと思いますよ。ただ、エリートスポーツとして幼いうちからさせる必要は全然ないと思います」
持久系スポーツの素晴らしさを頭では分かっていても、実際のしんどさを考えると始めるのにハードルを感じてしまうという人も多いのですが・・・。
「ある人が、人生は振り子だと言っていました。苦しい方に大きく振られたら、楽しい方にも同じだけ振られる。苦しみが少なかったら楽しみも少ないって。
スポーツも一緒で、苦しみが少ないと得られるものも少ない。だから頑張って苦しんでおかないと、楽しいほうへ振られる幅も小さくなってしまう。トライアスロンにしても、努力の割合が少ないと達成する喜びも少ないと感じます。
これが仕事だったら、頑張ってもなかなか直接は返ってきません。会社の問題とか取引先の関係とか、複雑な要因が増えるのでそれはしかたがない。ただスポーツは単純ですから、何かしらの喜びが絶対に返ってきます。それが分かるととても楽しいんですよ」
「僕は運動しない日というのはほとんどないんですが、怪我や手術などで数週間まったく運動できないときがあったんです。そうすると、ご飯もビールも全然おいしくないのでびっくりしました。運動してない人ってこんなにマズいビール飲んでるの?って(笑)
スポーツした後に飲んだら、安い発泡酒でも最高においしいですよ。走って汗をかいて生きている実感を味わって、ビールを飲んで旨いと思う。スポーツをしてない人に比べたら、こんなに人生を楽しめてると。
「なんで苦しいことするの?」って切り捨てて寄ってこない⼈は、達成したときの喜びや努⼒する楽しみを知らないことが多い。それって人生つまらないと思いませんか。苦しさを知らない人は楽しさや喜びも分からないから。同じ人生だったら、どうせなら楽しい方が良いじゃないですか」
振り子のように、苦しい方へ振れた分、楽しい方へも大きく振れた―最近の生活を振り返って、そんな経験がすぐに思い浮かぶ人は少ないのではないでしょうか。
もしあなたが今、人生にもの足りなさを感じているとしたら、私たちにはスポーツという選択肢があります。スポーツに真剣に取り組むことで、大きな喜びが得られるだけでなく、困難に立ち向かう力も鍛えることができる。そうなれば、もっと毎日を前向きに楽しむことができ、人生の満足度も上がっていくことでしょう。
昨今は車や電車だけでなく、エスカレーターやムービングウォークまでがあちこちに整備されるようになりました。ラクをしようと思えばいくらでもラクができてしまう環境のなか、私たちは意識して体を動かさなければ運動不足に陥りがちです。
まずはランニングや自転車のような継続しやすいスポーツを生活に取り込むことで、運動習慣を身につけることから始めてみませんか。
人気のコラム
Copyright © ethycalcycle association All Rights Reserved.