自転車は家族みんなが乗れて、便利で楽しい乗り物。しかしその反面、車や歩行者との接触事故も多く、特に近年では交通事故の総件数は減少する一方で、自転車と歩行者の事故は約1.3倍にも増加しているというデータもあるほどです(平成27年3月国土交通省より)。
身近な乗り物であるだけに、誰にでも起こりうる事故について、どのように対処するべきか?日頃の運転マナーを見直すことはもちろんですが、今回は起こってしまった場合にフォーカスし、自転車保険の必要性を考えてみましょう。
きっかけとなったのは、2015年3月に兵庫県が全国で初めて自転車保険の加入を義務化する条例を制定したことによります。その内容は、交通安全ルールの順守やヘルメット着用とともに、自転車損害賠償保険などに加入するというもの。
その後も、大阪府が2016年2月に条例案を提出したり、東京や京都などでは既に努力義務となっていることもあり、自転車保険に加入するという意識が一気に高まりました。
その背景としてあるのが、自転車事故の多発と、自転車側に対しての高額な損害賠償事例が増えていること。確かに、兵庫県での歩行者と自転車の事故は、平成16年から平成25年までの10年間で1.9倍に増加( 兵庫県「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」について)。
また、平成20年に神戸市内で起こった自転車事故では、加害者となった小学5年生の児童の母親に9,500万円の賠償が命じられたという事例もあります。その小学生は坂道を時速20~30キロで下っている際に歩行者と衝突、歩行者は意識が戻らず寝たきりの状態となりました。その原因は、自転車の安全な走行に対する児童への十分な指導をしていなかった母親にあると判断されました。
そのような事例を聞くと、小さな子どもを持つ親であれば、同じようなシチュエーションは十分に起こりうるケース。思わず背中がゾクッとさせられます。
では、なぜ交通事故の全体としての件数は減っているのに、自転車の事故だけが増え続けているのでしょうか。その理由を推測してみると、
そのような状況を考えると、自転車事故の増加は起こるべくして起こったといえます。
ここで私たちが一番気になるのは、やはり高額な賠償額を個人で負担しなければいけないということ。自動車であれば、購入する際に自賠責保険への加入が義務づけられていますが、自転車には加入義務がありませんでした。自転車保険を義務化することで個人を守るという、兵庫県の全国初の判断はなるほど納得がいくものです。
自動車より台数が多く、免許なしで誰もが乗れる自転車。万が一に備えるために保険に加入することは必須条件だといえます。しかも加入するなら、家族全員が対象となる保険に入るべきでしょう。それは、いま自宅に自転車が何台あるか、家族何人がそれを乗っているかを考えると察しがつくはず。自転車に乗ることさえできれば、家族の誰もが加害者になる可能性を秘めているのです。
自転車事故を年齢別で見てみると、7~24歳までの若年層、特に16~19歳で事故件数が非常に多いこと。また、死亡事故に関しては、65歳以上の高齢層が多い傾向にあります(内閣府ウェブサイト:交通事故総合分析センター「交通事故統計年報 平成20年版」より)
そういった状況を考えると、自転車保険はもちろんのこと、自転車の正しい乗り方について家族で話し合うことも必要です。自転車が車輌の一部であること、無謀な運転をすれば歩行者にとって恐ろしい凶器になることを改めて考え直す機会を持ちたいものです。
とはいえ、自転車保険がすべてを解決してくれる訳ではないことも忘れてはなりません。被害者が負った身体的・精神的な傷、最悪の場合は命やその後の人生に大きな影響を与えること。それはいくら高額な賠償額が支払われたとしても戻ってくるものではないのです。
ただ、一方で事故を起こしてしまった本人やその家族にも、将来があり夢があります。罪は罪として罰するのは当然ですが、一つの事故によって多くの人の人生が台無しになってしまうことは避けたいものです。自転車保険の必要性について兵庫県の挙げた声が社会全体に広まり、意識改革につながっていくことを祈りたいと思います。
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