イヤホンを聞きながら自転車に乗るのは違反なのか?2015年6月1日に施行された改正道路交通法に絡み、話題になっています。
改正された内容では具体的にイヤホンについて触れていませんが、さまざまな問題を引き起こす原因となりかねるのは事実。イヤホンをつけて自転車を運転するとなぜ危険なのか、安全な自転車の運転ルールについて考えてみましょう。
2015年6月1日に改正道路交通法が施行されて、自転車の安全対策が大きく見直されました。信号無視など危険な運転を繰り返す人には安全講習を受けるように義務づけられ、自転車の運転ルールを考え直すきっかけになったようです。
そこで持ち上がったのが、イヤホン走行は違反なのかという議論。結論から言えば、改正道路交通法ではイヤホンをつけての自転車走行については触れられていません。ただ、それとは別に都道府県ごとに定められた条例では禁止されているケースもあります。まずは、改正道路交通法の内容について見てみましょう。
(運転者の遵守事項)
第8条 法第71条第6号の規定により、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。
(5) 高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にイヤホン等を使用するときは、この限りでない。
その内容は、改正道路交通法のなかにある「自転車の危険行為14項目」にあてはまる行為によって、3年以内に2回以上摘発されると講習を受けなければいけないというもの(対象は14歳以上)。その14項目は、以下にご紹介しているとおりです。ちなみに、講習は1回3時間で5700円。一定期間内に受講しないと、5万円以下の罰金を科されることになります。
また、これ以外に都道府県ごとに定められた条例があり、そこでイヤホン走行について触れている自治体もあります。
たとえば、東京都の場合は「東京都道路交通規則」の第8条で「安全な運転に必要な交通に関する音が聞こえないような状態」での「イヤホンの使用は禁止」としています。
違反か否かという話はこのくらいにして、イヤホンをつけて自転車に乗ると、実際どのような危険があるのか考えてみましょう。
まず、当然ながら、周囲の音が聞こえにくくなります。
「私は音量を下げているから大丈夫」という方もいるでしょうが、実際にはそんな音も聞こえなかったの?と思うような事故がいくつも起きています。たとえば、遮断器のない踏切で電車に気づかずに横断してしまったなど、イヤホンをしていない状態では考えられないことですよね。
普段は意識していなくても、私たちは自転車に乗りながらさまざまな音を聞きとっています。後ろから近づいてくる車のエンジン音、自転車のベル音、突然飛び出そうとした子どもを呼ぶお母さんの声など・・・。そういった状況判断のための音が聞こえない状態で、自転車を運転するということはとても危険なことなのです。
イヤホンを使って70デシベル程度で音楽を聴取するとき、周囲の音に対する聴覚感度は30デシベル以上低下した。特に挿入型など遮音性の高いイヤホンでは最大65デシベル低下した。自転車のベル音に気付きにくいと考えられ、さらに大きな音量で聴取している場合には自動車のクラクションも聞こえるとは限らない。
東京都「東京くらしWEB」の「イヤホンの使用が聴覚に及ぼす影響についての調査結果」より
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/earphone_press.html
しかし、電車の音が聞こえないレベルとは相当な音量のはずです。なぜそこまで大きな音量にしていたのでしょうか。それには、聴いている環境が騒音の大きい屋外であることも考えられます。静かな場所で聴いているときに快適と感じる音量と、騒音のなかで快適と感じる音量は違うという調査結果も出ています。
また、自分に過失がなかった場合であっても、イヤホンをしていたということは確実に問題になります。たとえ、あなたが「しっかりと周囲の音を聞いて、安全確認していました」と証言しても、その時のイヤホンの音量が周囲の状況と比較してどのくらいであったかを説明するのは難しいでしょう。たかがイヤホンと思いがちですが、安全性を著しく低下させているのです。
イヤホンをつけての自転車運転については、今のところ絶対的なルールがある訳ではありません。しかし、ご紹介したように危険な事故につながる可能性がある以上は、間違いなく避けるべきです。
きびしく「シカって」しまうと、違反かどうかということが問題ではなく、社会生活をする一員としてどう考えるかということ。他人も自分自身も危険にさらす可能性があることは決してやらない。そんな自分の自転車ルールを持つことが真の自転車人といえるのではないでしょうか。
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