「自転車は車輌の一種だった」。改めてそう思わせられる自転車事故が増えています。イヤホンをしながら運転して横断歩道に突っ込み、結果的に相手を死なせてしまったなど、悲しい事故が後を絶ちません。自転車は楽しく便利な乗り物である反面、自分が加害者にも被害者にもなり得る危険性をもった、立派な車輌なのです。
そういった正しい認識を持つことが、自転車事故を防ぐ唯一の方法です。特に、未成年者の無謀な運転や事故が増えているいま、改めて自転車の運転ルールについて学び直してみませんか?そして、それを子どもにしっかりと、親のあなたから教えてあげてください。
さっそくですが、ひとつ質問。自転車に乗っているとき、あなたは交通標識を見ていますか?
もし、ほとんど意識していないとしたら、あなたは「車輌の一種である自転車」を運転しているという意識に欠けているといえます。
子どもの頃から気軽に乗っている自転車は、あまりにも身近で忘れがちですが、車の仲間。車輌である以上、基本的には車道を通らないといけないし、交通ルールを守らなければいけません。自動車なら免許を取るために交通ルールをしっかりと学びますが、自転車は乗れさえすれば、誰でも運転できる乗り物。だから、危険が伴うのです。
そして、車輌であるということは、当然ながら歩行者とは別の存在であること。あなた自身が加害者にもなり得るということを認識しなければいけません。
自転車が車の仲間であることについて、社会全体としての意識が低いということは、経験の少ない子どもたちが無茶な運転をしているのも、残念ながら自然な流れです。
平成26年に発生した自転車事故で、死傷者の約3割※が未成年者。しかも、事故を起こした未成年者の71.4%は、何らかの違反(安全不確認など)をしていました。このようなデータを耳にすると、子どもたちを自転車事故から守るために、私たち大人の責任はとても大きいと感じます。
子どもたちにとって、自転車に乗ることは楽しい冒険であり、自分の世界を広げてくれる自由な乗り物。その楽しさを教えてあげることは大切ですが、同時に軽車両を運転することの自覚もしっかりと教えなければいけません。そして、教えるならできるだけ早いうちに。自分たちがそうであったように、小さな子どもの頃に学んだことは、大人になってからもずっと身についていることが多いもの。子どものうちから、親が見本となって日頃から教えてあげることが何よりも大切なのです。
たとえば、国民の自転車所有率が100%を超えるオランダでは、どのような自転車教育を行っているのでしょうか。
「オランダ人は自転車に乗って生まれてくる」という言葉があるほどオランダ人は自転車好き。3歳のお誕生日には、両親から自転車をプレゼントされるのが風習になっていて、その時に乗り方を教わります。その後は、10歳になるとほとんどの子どもたちが「国民交通試験※」を受けて実技と交通ルールを学びます。
自転車に乗る機会が多いこの国では、親からも日常的にルールを学ぶ機会が多いことも特徴的。子どもたちは「おはよう」や「ありがとう」といった挨拶を身につけるような感覚で、自転車ルールを学んでいきます。
そういった教育の成果からか、自転車事故の死者数は、長期的にみると減少傾向。1980年に比べて2005年には自転車走行距離が45%も増えているのに対して、自転車事故の志望者は6割近くも減っています。
ただ、日本と大きく違うのは、自転車が走りやすいように交通整備が整っているということ。自転車専用の道路が用意されているので、自動車、自転車、歩行者がそれぞれの通行路を安全に通ることができるのです。そういったことを考えると、より交通事情の悪い日本では、オランダ以上に自転車運転のための教育が必要だといえます。
それでは、自分の子どもたちが自転車事故に巻き込まれないために、何を教えておくべきか。基本的な自転車ルールをご紹介します。
特に危険なのは、信号のない交差点。そこには必ず一時停止の標識があるはずです。
その標識を見たら、3秒間は止まって左右を確認すること。それを徹底するだけでも、自転車事故の件数は大幅に減らすことができます。
「ヘルメットをかぶりなさい」と言われても、なぜそれが必要なのかを理解しないとなかなか実行できないものです。「小さな子どもに説明しても分からないから」と決めつけず、何度でもていねいに教えてあげてください。
実際に、自転車事故でもっともケガをしている部位は頭部が64%、自転車走行時にヘルメットを着用していた場合とそうでない場合では、死亡者数は約4倍にもなるのです※。
また、ヘルメットを選ぶ際には、サイズがしっかりと合っていること。かぶるときは、もし転倒してもヘルメットが脱げないように、あごヒモをしっかりと固定することも大切です。
自転車は車のなかま。基本的には車道の左側を通ることが決まりですが、13歳未満、もしくは70歳以上は歩道を通ることができます。また、13歳以上でも、道路標識で認められている歩道であるとき、車道の通行量が非常に多くて危険な場合などには歩道を通ることができます。
とはいえ、歩道では、歩行者が優先。小さな子どもであろうと、スピードを出せば歩行者にとっては危険な存在です。歩道を通るときは車道側に寄って徐行を心がけ、歩行者の邪魔になりそうなら止まることが大切です。
また、13歳になるタイミングで、歩道はあくまで歩行者が優先、車道では左側通行というルールをもう一度確認するようにしましょう。
横断歩道を渡るときは、自転車マークが描かれた道を通ります。自転車マークがない場合は、歩行者と同じところを渡りますが、邪魔になりそうなときは自転車から降りて、押してわたること。横断歩道でも、あくまでも歩行者が優先です。
自転車の運転にどうしても必要な交通標識は以下の9つ。道を歩いているときも、子どもたちとクイズを出しながら教えましょう。
自転車も進入でいません(自転車を除く補助標識がある場合を除く)
自転車も逆行できません(自転車を除く補助標識がある場合を除く)
自転車を含む全ての車両の通行を禁止します。
自転車の通行を禁止します。
直ちに止まれる速度で走行すること(自転車も例外ではありません)
必ず一時停止して左右(周囲)の安全を確認します。
歩行者だけが通行できる専用道路です。
歩行者と自転車だけが通行できる専用道路です。
自転車が横断するときに通る場所です。
自転車は、風を体で感じながらスピードも出せて爽快。子どもにとっては、行動範囲が広がり世界を広げてくれる楽しい乗り物です。
しかし、歩行者にとっては、自転車は危険な存在になり得るもの。そのことを心に留めて、歩行者に対する気遣いを忘れない人であってほしいものです。そして、そんな気持ちをもち続けることが安全運転につながり、他者を思いやれるやさしい心を育むことにもなります。本当に強い者は心やさしい者であるということは、車を運転する年齢になっても重要な心構えとなるに違いありません。
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