記念すべき第1回は、世界を舞台に活躍するエシカル人・別府始さんが登場。
スポーツ専門チャンネル「J SPORTS」で自転車レース解説も務める人気スポーツジャーナリスト。
2人の弟は、プロサイクリストの別府匠さんと、世界的に活躍する自転車ロードレーサーの別府史之さんという生粋の自転車人です。
そんな別府始さんがもつグローバルな視野から、エシカルなサイクリングを学びたいと思います。
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- 別府 始(べっぷ・はじめ)
1977年9月19日 神奈川県茅ケ崎市生まれ
有限会社ブルーフォート代表。自身、J SPORTS サイクルロードレース中継の解説など、スポーツジャーナリストとしてTV出演、講演、執筆、Web企画など、活動する一方で、弟でプロサイクリスト別府史之(チーム・レディオシャック所属)のマネージメントなどを行っている。またアジアNo1チームを目指すUCI コンチネンタルチーム愛三工業レーシングチームのアドバイザーも務めている。
- 別府 始(べっぷ・はじめ)
—– 職業柄、国内外の自転車事情をよく見聞きされている別府さんですが、そういった視点から日本と世界の自転車マナーの違いなどはありますか?
一番大きく感じる違いは、そもそも日本は自転車のために作られている環境にないという事です。自転車は車道を走るもの、と言いながら、車道に自転車が走るスペースが整備されていないのが現状。そもそも自転車に乗る感覚が歩行の延長で、歩いている感覚で乗っている人がほとんど。しかも長い歴史の中で間違ったルールがつくりあげられてしまっているので、これから急に「このルールはダメです」といってもなかなか改訂が難しいんじゃないかな、と普段感じていますね。
私も子どもを乗せて自転車を走らせる際は、車道を走るのが怖いです。きちんとしたスペースが確保されていない車道は、とても安全に自転車が走れるような環境ではないですから。
だいたい、みんなの持っている意識が違いますよね。どんな環境にあっても、海外では「自転車は歩道を自由に走るものじゃない」という意識がある。そして、自転車は車道を走っていて、車側もそれが当然と思って運転しています。
もちろんインフラも大切なんですけど、人の意識が大きい部分を占めていると思っています。まずはこれを変えないといけないと思います。
—– だからこそ、そういった意識を変えていく啓発活動が重要なんですね。
そう、環境を整えていくだけではダメです、「啓発しながら」という事が大切。たとえば、放置駐輪が悪いことだと教えて、駐輪場の場所を紹介する。そうすれば自分の都合のいいところに置いて、放置駐輪をしてしまう事なんて起こらないはずです。自転車は安全に乗らないといけない。健康にも環境にもすごくいい移動手段だし、自転車に気持ちよく乗れる環境にしたいなと常に思っていますね。
—– 東日本大震災では、スポーツとしての自転車の観点から、被災地の方を勇気づけるプロジェクトを開始されたそうですね。
震災を機に、自転車のスポーツという側面から、何か被災地の方を元気づけることができないか・・と思ったんです。よく筋書きのないドラマっていうように、スポーツってものすごいドラマを持つエンターテイメントなんです。だから、
フミ(弟の別府史之さん)が、自転車レースで世界を相手に闘っている姿を見せるっていうのは、日本人として応援している人たちのモチベーションを上げることに繋がると思うんです。僕自身も、フミをサポートする立場なのに、逆に彼の走りを見ることで勇気づけられたこともありますしね。
ただ、はじめは皆どうしたらいいのか分からなかった。フミ自身も、海外にいることもあって、日本にいる皆に何か伝えたくても方法が分からない。たくさん話し合いをしましたね。
——そこで立ち上がったのが「 You are NOT alone ~ひとりじゃない 」ですね。
メッセージについては、ただ、大丈夫だ!がんばろう!っていうのも空回りしている気がして。そこで「ひとりじゃない」っていうのが出てきた。
被災地の方をはじめとして、日本中が不安になっている中「ひとりじゃない」っていう言葉で、あらゆる人を勇気づけてあげられるんじゃないかということで、やろう、ということになりました。
日本語にしたのは、このプロジェクトを知らない方が見ても、このメッセージを見たらきっと嬉しいだろうなと思って。僕自身も東京にいながら不安に思っている中で、海外の選手達がキャンペーンで日本語のものを身につけてくれているのを見て、「ひとりじゃない」しっかりしなきゃな、っていう気持ちにもなりました。
—– エシカル・サイクルの活動を行う上で、どんなことが大切だと思いますか?
みんながお互いのことを思いやることが大切だと思います。自転車で街を走っているときに「みんなのことを考えてたら、そんな走りかたできないでしょう」っていうのをいっぱい見るじゃないですか。まずはみんなのことを考えたら、そういうことはできないよね?っていう。そういうことを心がけてほしいと思います。
車道からいきなり歩道に上がってくる人とかね。「ちょっと待ってよ!それでいいの?いまそこにいた子どもがびっくりしてたでしょ」って(笑)。
ルール以前の問題で、互いのことを考えれば自然と気をつけよう、と思えるので。信号が青でも、よく見て走らないといけないというのと一緒ですよね。免許がない乗り物なので特にその意識が大切だと思います。でもそれって自転車乗っている人だけでなく、歩いている人も一緒ですよね。全ての人たちが意識を持ってくれたらいいですよね。で、それでも「速く走りたいんだ!」っていう人は、そういう環境に行くことで解決できるはず。街の中で飛ばさなくても、って思いますね。
だからこそ、これからは通勤に自転車を使っている人も、車道の広い場所を選んで歩行者と車に迷惑をかけないルートを選択することが必要なんじゃないかなって思います。
—– これからのご自身の活動での目標を教えてください。
自転車のロードレース観戦を楽しめる環境を作りたいですね。あとはマスメディアで自転車レースのニュースが普通に報道されるようになるぐらい、多くの人に知ってもらえたらって。それには、どういう話題づくりをしていくかですね。パッと見て理解できるという競技ではなく、レースの面白みがわかるまで、少し知識が必要なので、ちょっとハードルは高いですけどね
あとは、世界で活躍する日本人選手の成績がついてくれば、どんどんどんどんそういう波ができると思います。そして、その事実をしっかりと伝える必要もありますよね。新聞社や通信社に自転車ロードレースの記事がかける人なんてほとんどいないですから。そういう部分での啓蒙活動も必要ですよね。どんな走りが評価できる走りなのかとか。競技を知らない人たちにはドキュメンタリーでもっと伝えたいですよね。
そう思うと、僕の目標ってメディアとして情報発信に協力していくことでもありますね。